モチーフ4.「小笠原諸島」
昨今は硫黄島の戦争映画や沖ノ鳥島の海域問題といった政治的な印象を受けますが、歴史的には日系人と欧米人が共生していたユニークな経歴をもつ島です。
もともと無人島であったところへ欧米とハワイ系の人々が捕鯨船の拠点として移住しました。後に、この無人島の重要性に気付いた幕府が小笠原諸島の領土を主張し、日本人の移住が始まりました。このときから日系人の村と欧米系人の村が緩やかに共生し始めます。太平洋戦争中は激戦地となり、1968年にアメリカから返還されました。
現在の小笠原諸島は観光業を中心に、定期船「おがさわら丸」が来航する周期(6日に1回)に合わせて生活しています。旧くから住んでいる欧米系人と日系人に加え、近年では独自の生態系や文化に惹きつけられた研究者や若い人たちが移住をしてきて新島民となっています。
神里雄大は6月に約2週間この島に滞在し、本作のための取材をしました。最初の移住者である欧米系人の子孫と交流を深め、島の歴史や文化を取材し、島の人の案内で戦跡や土地の分断の跡を見せてもらったそうです。